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【AMWA通信4】ダイエット注射「GLP-1」ビジネスについて

更新日:2022年5月7日

AMWA通信では健康に関する様々な話題や

世間で注目されていることを医学的アプローチで紐解いていきます。


今回は、若い女性の間で話題になっているダイエット法

「GLP-1ダイエット注射」に関して問題点を提起したいと思います。


AMWAの副代表理事を務めさせていただきます私、末武信宏は

1:トップアスリートのボディメイキングを指導するメディカルトレーナー、

  プロボクサーの減量指導をするトレーナー

2:自律神経の研究者

3:美容医療を臨床医として診療

4:順天堂大学医学部 病院管理学教室で 代替医療と倫理 の講義担当講師


という立場で 最近話題のGLP1ダイエットに関し見解を述べさせていただきます。





GLP1ダイエットとは、インスリンの分泌を促進したり、食欲を抑制させる働きをもつGLP1という注射をすることで、体重を減らすダイエット法のことです。現在、多くの美容クリニックが「簡単、安全にできる自己注射、リスクのない簡単ダイエット」と派手に推奨しています。


ネット広告でも毎日のように目にする機会があります。GLP-1ダイエットを遠隔診療し、通院不要の手軽さを売りに販売するクリニックさえ出てきました。


このダイエット法の売りは


・努力しなくても 簡単に 安全で 短期間で痩せられる

・これまで失敗したダイエット法と違い 医師が勧める安全なもの

・海外でも当然のごとく行われている FDAが認可した安全な薬剤


とまるで魔法のダイエット薬のような言葉が並びます。




この事態に、日本医師会は早々に「医の倫理に反する行為である」として警告を出しました。


朝日新聞に掲載された記事。

https://www.asahi.com/articles/ASN6K6QPFN6KULBJ00L.html


日本糖尿病学会も同様に反対の姿勢を示しています。

https://mainichi.jp/articles/20200915/dde/041/040/024000c


専門医は糖尿病以外の適応外の使用に関して、安全性も有効性も確認されていないと断言しています。つまり、このダイエットに対する使用に関しての安全性や有効性のエビデンスは、国内では無いということです。


また、複数のメディアが 死のリスクすらある危険なダイエット法と特集記事を組んでおり、現在発売中のFRIDAYにも掲載されています。

https://friday.gold/article/2449




私の考えは、糖尿病、もしくは糖尿病境界域で、かつBMIや体脂肪率が「肥満」と診断できるレベルの方で、血液検査を実施したうえで、しっかり健康管理できる医師の下で行うのであれば、ダイエット治療は実施されても良いかと思います。


しかし、現状ではほとんどの美容クリニックでは満足に問診すら行われず、血液検査、体組成率などの検査すら行われていません。つまり、身体の状態を一切無視して行う極めて危険で、理不尽なダイエット法なのです。


体重さえ減少すればよいというダイエット法が医学界で通用するはずもありません。

仮に海外で肥満症の適応になっていたとしても、日本人と欧米人では遺伝子も肥満の原因も、その程度も大きく異なるため、全く参考にならないのです。


少なくとも日本人で肥満など臨床試験が実施された実績や副作用を含めた薬効のエビデンスはありません。


NGな点はたくさんあります。


1:誰でもかんでも 痩せていようが標準体重だろうが痩せていようが 痩せたい願望の女性へ

2:血液検査や最低限の体組成検査も一切行わず

3:リスクなど十分な説明なくメリットや安全性のみを強調

4:併用するダイエットも問診で確認せず

5:運動も無視し

6:営利目的優先

7:GL-P1注射による副作用が出ても放置

8:高金利の高額医療ローンを組ませられることも

という事です。




また、これはどのドクターも指摘していませんが、若干でも血糖の低下が起こりうる場合は自律神経へもかなり影響が出ます。特に低血糖になると交感神経が異常に優位になり、血糖の正常化を維持しようとして副交感神経の働きを抑制します。

つまり身体の神経系統の機能としては、「ダイエットには逆効果」になる可能性があるのです。


このダイエット注射を長期連用すると私はほぼ確実に自律神経へのダメージもしくはコントロール能力が低下するリスクがあると考えております。


血糖コントロールに重要な身体システムは自律神経なのです。

低血糖は脳や体中の細胞にダメージを与えますが、同時に自律神経へも悪影響を与えているのです。

食欲が抑制されることは副交感神経レベル低下の状態と想定されます。

血糖値の日内変動の大きさは自律神経へのコントロールを無視した薬の作用です。変動が大きければ大きいほど身体への負担も大きくなるのです。


これは血圧も同様ですね。

糖尿病の患者様は随時高血糖ですが、ダイエットを続けている女性は高血糖の事はまずありません。(むしろ低血糖気味?)


正常範囲内での血糖値の推移に変化が生じることは、自律神経の観点から考えても、決して安全であるとは断言できないのです。臨床治験でも自律神経の測定などは実施されていませんので、自律神経への影響は無視されているというのが現状なのです。





アメリカでは肥満の薬として承認されているから安全です、とホームページに掲載してこの注射を勧めている医師がいますが、前述のように、そもそも日本人とアメリカ人では肥満度合いもその種類や仕組みも全く異なります。


BMI30を超えるような肥満の方は日本人にはほとんどいませんし、ダイエット注射を希望される方は、単に美容目的であって肥満とは程遠い体系の方も少なくないのです。アメリカ人の肥満治療が日本人に同じように当てはまるはずがありません。

そのようなエビデンスも存在しないはずです。



「GLP1注射薬 オンライン処方します!」

果たしてこの行為が健康を預かる医師として正当な行為でしょうか?

疑問です。


体組成も血液検査も無く、日本人のダイエットには適応外の糖尿病治療薬を、肥満症ではない、一般の女性にダイエットだけの目的で自己注射させる行為が適正な医療行為といえますか?


違法でなくても、不当行為なのです。

インフルエンサーの過大なPRや、よいしょ記事にも要注意です。

体験して簡単、安全、確実にダイエット成功!などSNSでギャラ目的でPRされていますが、素人の個人感想を真に受けてしまうと大変なことになりかねません。



最近、私が特に危惧していることは美容整形インフルエンサー、ダイエットインフルエンサーの存在です。彼女たちは自分のダイエット体験をあたかも魔法にかかったように、過大なPRをしているのです。営利目的でのPRをうのみにしてしまうことは大きなリスクを負うことにもなりかねません。


GLP-1ダイエットのために数か月で100万円を超える金額をローンで支払っている方もいます。魔法のようなダイエット法は残念ながら存在しません。

それより楽しくエクササイズしてみましょう。


私どもAMWAでは、自律神経的アプローチでダイエットが可能なエクササイズや基礎的研究によるダイエットのメカニズムの理論の臨床応用などの情報を今後も随時、発信してまいります。


身体を動かすことと、大きな深呼吸を繰り返すことは、ダイエットに必ず役立ちます!


(担当:副代表理事 末武 信宏)

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当会理事の雪下が様々な分野の著名人がオリンピック、パラリンピックについて語る毎日新聞の連載記事、「東京・わたし」のインタビュー記事に掲載されました。車いすユーザーとしての視点やTwitterを活用したSNSでの活動、今後の展望についても言及しています。 記事はこちらから。 https://mainichi.jp/articles/20210428/k00/00m/050/187000c

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